釣りを楽しむ方なら、フライフィッシングを知らない方はいないですよね。
ルアーで渓流釣りを楽しんでいて、フライに興味を持つ方も多いかと思います。
何を隠そう私もその一人でしたが、フライは難しいというイメージは今でもぬぐえません。
魚を釣るという意味では同じですが、どうやって釣るかはまったく違うものです。
しかも、ルアーや餌釣りなどを経験している人からすると、同じ名前で全く違う意味を持つ道具などもあって、より難解になっています。
これだけの釣りブームの中ですら、フライはご新規さんが増えているとはいえず、むしろ業界的に初心者への入り口を積極的に用意していない雰囲気すら漂います。
しかし、フライフィッシングが素晴らしい釣りであることには変わりなく、なんとか盛り上がってほしい。
というわけで、ルアー&フライのハイブリッド釣り師の私が、なんとかその現状に一石を投じようと、アングラー向けのフライフィッシング入門を促していこうと思います。
注)ルアーの経験はフライに持ち込めません
フライを始めるハードルは業界の風潮だけでなく、そもそもの釣り方の違いも大きいです。
ルアーのベテランがフライにも挑戦したいと思っても、一朝一夕にはいきません。
年間何百匹ルアーで釣っていたとしても、ゼロからのスタートになります。
自動車とバイクぐらい違うものと言っていいでしょう。
しかしフライがド級に難しいことをしているというわけでなく、理解すれば簡単に楽しむことができます。
まずは意識改革として、なぜルアーの知識や技術がフライに持ち込めないか、その理由を解説します。
魚からの認識が違う
まずルアーとフライは、魚が口に入れる理由が違います。
大雑把に言えば、魚から見たルアーは「食えるかも」「追わなきゃいけないかも」といった認識です。
しかし、フライは「食べられるものだ」と完全に間違えて口に入れるため、アプローチが全然違うのです。
例外はありますが、積極的にアピールしに行くルアーと、魚が気付くのを待つフライというのが大きな違いかなと思います。
今回はそこまで深く解説しませんが、マッチ・ザ・ハッチという考え方を学ぶと、フライの概念が分かるかなと思います。
ロッド・リール・ラインの役割が全く違う
フライフィッシングとの他の釣りは、ロッド、リール、ラインの組み合わせ自体は同じなのですが、基本的に別なものと考えてください。
ロッドの役割、リールの役割、ラインの役割はルアーフィッシングや餌釣りと全く違い、名前が同じだけぐらいに理解していいほどです。
詳細は後半でサラっと解説しますが、とりあえずルアータックルの知識は別なフォルダーにまとめて、フライのタックルは新規フォルダーを作成して記憶しましょう。
ほかの釣りと投げ方が全く違う
フライフィッシングも疑似餌を投げて釣りますが、投げ方がフライとその他では全く違います。
ソフトボールと野球のピッチングぐらい違います。
フライロッドを持ったら、ルアーのキャスティングはとりあえず忘れましょう。
ルアーのキャスティングは、センスにもよると思いますが、とりあえず30分も練習すればとりあえず投げることができるかなと思います。
しかしフライのキャスティングは、原理や基本を知らないといつまでたっても出来ません。(筆者はできなかった人です)
後ほどそこらへんも解説しますので、ここまでの解説であきらめなかったアングラーの方は引き続き読み進めて頂けると幸いです。
フライフィッシングのフライ(毛鉤)とは

本格的に解説すると長くなってしまいますので、とりあえず覚えておくべきフライの知識をサラッと解説しておきます。
フライとは、アイの付いた針に動物の毛やら鳥の羽などを巻き付けたもので、それが虫や魚に見えて魚が食べるというのは大体知っていますよね。
そこに飛んでいる虫に似たものを選んだり、自分で巻くのを楽しんだりというのもありますが、とりあえずそれはどうでもいいです。
アングラーにとって重要なのが、このフライ自体には、ルアーやジグヘッドのような重さがないということです。
後半で細かく解説しますが、
『ルアーのキャスティングはルアーの重さでラインを引っ張り出す』
『フライのキャスティングはラインを飛ばしてその先にフライが付いている』
という違いは覚えておきましょう。
フライのタックルについて

実は毛鉤よりよっぽど重要なフライのタックルについて解説します。
先に解説した通り、ルアーのタックルとフライのタックルは、名前こそ同じでも全く違うものです。
ルアーの知識に引っ張られて選ぶと大失敗する(筆者は大失敗しました)ので、どれだけ役割が違うのかに重点を置いて解説していこうと思います。
フライリール
フライフィッシングに使うリールとルアーに使うリールは形状からして違いますが、そんなことはどうでもいいほど役割が違います。
ルアーのリールは「キャスティング時ラインを放出する」「ラインを巻き取る」「ドラグでラインを守る」という3つの役割がありますよね。
フライのリール操作は、「ラインを手で引っ張り出す」「ラインを収納する」「ドラグはおまけ」というイメージです。
フライのキャスティングは、キャスティングするまえに必要なラインは手で引っ張り出しておくので、キャスティング中にラインを放出する役割はありません。
ラインを巻き取るのも、ルアー(フライ)を巻き寄せるために巻くのではなく、出しすぎたラインを収納するために巻き取ります。
ドラグについても、基本は指でラインを抑えて魚とやり取りするため、基本的にはどうしようもないときに使う機能で、スピニングリールやベイトリールほど繊細なドラグはありません。
なんならドラグが付いていないフライリールすらざらにあります。
この違いを覚えておくだけでも、フライのキャスティングのハードルが下がるので、しっかり覚えておきましょう。
フライロッド
フライのロッドは、見た目はルアーロッドとそう変わらないですよね。
ただし、設計で考えられていることが違います。
ルアーロッドは、ルアーの重さを載せて飛ばせるよう、柔軟性を重視してパワーで分けられていますよね。
フライのロッドはそうではなく、あくまでラインを飛ばすことを重視しています。
鞭のようにラインを飛ばすための柄としての役割が大きいため、基本的にはルアーロッドよりかなり硬く作られています。
もちろん柔らかいものを選ぶことはできますが、ラインを飛ばす能力には劣り、飛距離を犠牲にすることになります。
その飛距離もルアーロッドの飛距離の優劣とは大きく違うので、これはいずれ別な生地でアングラー用フライタックルの選び方講座として解説しようと思います。
ライン
フライのラインはフライフィッシングの肝で、これがなければフライフィッシングは成り立ちません。
ルアーでは魚やポイントの環境に合わせてラインを選びますが、フライラインのベースとなる考え方は、ラインを飛ばすことにあります。
私のように、無理やりルアーのラインを組み込むようなことはやめましょう。
フライのラインシステムは3つ(+1)のラインから成っていて、その役割は違います。

専門的に解説してくれているティムコさんのサイトを見ていただいてもいいのですが、これはこの項目だけではまとめきれないので、少ししっかり解説しておこうと思います。
フライフィッシングのラインシステム
アングラーから見て、フライフィッシングで一番意味が分からないのがラインシステムでしょう。
フライのキャスティングは、ラインがフライを持っていくイメージで、そのためのラインシステムになっています。
ではそれぞれどういう役割なのか、アングラーにもわかりやすく解説していきます。
3つのラインの構成
フライラインは、主に3つの異なるラインをつないで、1つのラインとして使います。
ルアーだと多くてもメインラインとショックリーダーなので、もう意味が分からないですよね。
具体的には「フライライン」「リーダー」「ティペット」の3つを使用します。
もう一つ「バッキングライン」というのもありますが、これは少し性質が違うので別途説明します。
ここでもリーダーというややこしい名前のやつが出てきますが、ショックリーダーとは別物なので、それぞれ解説していきます。
フライラインとは
フライラインは、一見するとワイヤーのような太い糸で、これがフライキャスティングの根幹です。
触り心地や見た目は電気ケーブルのビニール線みたいな感じです。
フライラインは柔軟で重たいので、簡単に言えばラインだけで振り回すことができ、このフライラインが主導してフライを飛ばすというわけです。
たとえるならロープトレーニングのように、ラインに動きを付けられるというわけですね。

これ結構お高くて、安くて3000円ぐらい、高いのになると1万円ぐらいのものもあります。
リーダーとは
ルアータックルでいうリーダーは、メインラインの欠点を補ったりするためのものですが、フライフィッシングのリーダーは全くの別物です。
フライラインはかなり太くて、直接フライを結ぶことはできません。
じゃあフライラインにショックリーダーを結ぶ、というのもできません。
というのも、太いフライラインに細いラインを直接結ぶと、そこが関節になってしまいフライがまっすぐ飛ばせないのです。
そこで用意するのがリーダーです。
リーダーはテーパーになっていて、根元が太く先端が細くなっています。
これによって太い部分がフライラインの動きを追従するため、関節がなくなるのでフライをまっすぐ飛ばすことができ、先端は細いので毛鉤を結べるというわけです。
端的に言えば、フライラインとティペットの太さのギャップを補うためのものと言っていいでしょう。
ティペットとは
実は、リーダーの先端も一般的なルアーのラインと同じ程度の太さなので、そのままフライを結んで全く問題ありません。
ではティペットは何のためのものかというと、基本的にはティペットを無駄に減らさないためのものです。
リーダーは1巻き300円ぐらいするので、フライを結びなおすたびに切っていると消耗が激しく、コスパが悪いんですよね。
ティペットをつないでおけば、結びなおすときはティペットが減るので、リーダーを切る頻度が減り、ランニングコストが下がるというわけです。
一応違うラインを繋いで扱いやすくする、ルアーのショックリーダー的な役割もあることにはありますが、説明が長くなる&最初は考えなくていいので今回は割愛しておきます。
バッキングラインとは
バッキングラインは、2つの役割を持つラインです。
一つ目の役割は、スプールの下巻き、かさ増しとしての役割です。
フライラインは巻き癖が付くと使い物にならなくなるので、かさ増ししてスプール径を大きくして、フライラインの巻き癖を軽減する役割ですね。
ちなみに、スピニングやベイトでいうシャロースプールに当たる、「ラージアーバー」であれば、かさましとしてのバッキングラインの必要量は少なくなります。
もう一つ、フライラインの長さを補う役割もあります。
フライラインは太くてそこまで長さを巻けないので、万が一大物がかかったとき、ファイトに時間をかけるとラインを出し切られてしまうことがあります。
そうなった時の保険として、バッキングラインが長さを補ってくれるというわけです。
フライのキャスティングについて

ここまでの解説で大体わかったと思いますが、フライのキャスティングはルアーの感覚ではできません。
細かい投げ方講座はティムコさんあたりが詳しい動画を出しているのでそれを見ていただければいいと思いますが、それ以前の概念的な部分を解説しておこうと思います。
ティムコの初心者向け動画ですら初見だと意味わからなかったりするので、そこにスムーズに入れるよう誘導していきます。
フライラインの動きがすべて
ルアーフィッシングの場合は、ルアーにロッドの反発を載せて、ルアーが飛んでいき、ラインがそれに引っ張られて放出されていきますよね。
フライフィッシングのキャスティングは、最初から最後までラインにかかっています。
フライラインに正しい動きを付けることでフライラインが飛んでいき、それにその先についているリーダーとティペットが追従し、その先に結んであるフライがついでに落ちるという感覚です。
つまり、ルアーフィッシングの感覚で先端のフライに意識を置くと、まったくキャスティングできません。
何においてもフライラインをどう操作するか、それにかかっています。
ロッドの振りはゆっくり
ルアーのキャスティングは、ロッドの反発に乗せてルアーを飛ばすことで飛距離を出しますよね。
しかしフライフィッシングでそれをやると、トラブルの原因になります。
あくまで「フライロッドはフライラインを操るための棒」なので、ルアーのようにロッドの反発に乗せて飛ばそうとするのはNGです。
厄介なのが、それにもかかわらずフライキャスティングの解説動画では、「ロッドの反発を使って~」と解説されることがあります。
それはたしかにそうなんですが、ルアーロッドの反発とフライロッドの反発はベクトルが全く違うので、アングラーは誤解してしまうと思います。
アングラーはロッドの反発云々の解説はされても無視して、フライラインを操ることだけを考えてください。
ロッドの反発を意識するのは、遠投したくなった段階で十分です。
すべてのセッティングが繊細
ルアーフィッシングは、大雑把に言えば適当でもある程度なんとかなるシーンがありますよね。
とくにスピニングならなおさらです。
しかしフライはそうともいかず、ロッドとラインのバランス、釣り始める前のラインのクセ取り、キャスティング前にラインをどれだけ出しておくかなどなど、計算づくで一つのキャストが完成します。
なんなら自宅でのラインのメンテナンスも結構重要です。
これだけ聞くとちょっと面倒なイメージがありますが、全くその通りで、ぶっちゃけルアーフィッシングよりめんどくさいです。
ただ原理自体は簡単で、その管理さえできていれば、初心者がその日のうちに釣り始めることもそう難しい話ではありません。
ただその準備をするために知識を付けるのがまた面倒だったりするんですけどね…笑
というわけで
今回はアングラーがフライフィッシングを始めたいときの、意識的な部分について解説しました。
具体的にこれを買えとかあれを買えとかはいろんなところで書かれているので、そっちを見ていただければいいかなと思います。
それぞれの選び方については、アングラー向けにまたアングラーベースでの考え方を解説したいですね。
ここまで読んでいただいた方にはわかっていただけたかと思いますが、フライフィッシングは、残念ながらルアーほど一朝一夕に行かないのは事実です。
道具もちょっと高いですし、投げ方もゼロからのスタートで、フライのチョイスもルアーとは考え方が違います。
でもそれでも私がルアーとフライをやるのは、それぞれお互いに釣れないシーンが確実にあると実感しているからで、その面倒を乗り越えるメリットがあるからです。
せっかくフライフィッシングにも興味を持ったなら、ぜひその勢いのまま突っ走って、フライフィッシングにも挑戦してみてください。
微力ながら、このブログでもそのお手伝いをできればと思っています。
というわけで今回はこの辺で。次回更新もよろしくお願いします。