釣具店には無数のルアーが並び、選びきれないほどの種類が販売されていますが、そんななか、あえて自分で一からルアーを作る、ハンドメイドルアーに挑戦する方が増えているようです。
釣具店のルアービルディング用品のコーナーなんて、ほとんどほかのお客さんとバッティングすることはなかったんですが、最近人がいることが多くてゆっくり見ることができないほどです。
そんなに皆さん興味があるなら…、というわけで、今回はハンドメイドルアーの作り方について解説していこうと思います。
ハンドメイドルアーにもいくつか種類がりますが、今回はちょっと本格的な、でも初心者でもできる、バルサ材を使ったミノーの作り方について解説していきます!
なお、今回は入門編です。
長くなりまずが基本をざっと紹介して、次回以降細かく手順を追って解説していきますので、ぜひ続きもチェックしてみてくださいね。
意外と簡単?ハンドメイドルアー
ルアー、とりわけミノーってよくよく考えてみると不思議なものですよね。
硬いはずなのに、なぜかなまめかしく魚のように泳ぎます。
それだけ考えると、ちょっと難しそうと思うかもしれませんが、実はそんなに難しいことはしていません。
昔、ネタでMONO消しゴムにリップとウエイト、そしてアイを付けてみたんですが、ちゃんと泳いでくれました。(さすがに釣れなかったけど)
実は、ルアーの動きの根本は、水圧を受けてバランスを崩し、勝手に戻っているだけです。
つまり、泳がせるためにやることはバランスを崩してあげるだけなので、そんなに難しくないんです。
原理としてはそれぐらい簡単なものなので、ポイントさえ押さえればきっと誰にでもできるはずです。
もちろん理想のアクションを追い求めると果てしないですが、個人的には夏休みの自由研究なんかにも最高なんじゃないかと思っています。
ただし、カッターや瞬間接着剤、溶剤を含んだコーティング剤なんかも使ううえに、売り物ぐらいキレイに仕上げるにはコツがいるので、そういった部分でのハードルはちょっと高いかもしれませんね。
バルサ材ってなに?

今回ミノーのボディ作りには、バルサ材を使用します。
そもそもバルサって何?と疑問に思う方も多いかもしれませんが、簡単に言えば木の一種です。
まるでスポンジのように空気を多く含んだ木材で、ほかの木よりも浮力が強く、カッターでも簡単に切れて加工が楽な木材です。
大型のホームセンターなんか行くと、たいてい板材が数百円で売っているかと思います。コスパもいいですね。
木のルアーって珍しいように思いますが、実はあの有名なルアー、ラパラのカウントダウンリーズのボディもバルサを使っています。
もちろんプラスチックでルアーを作ることもできるのですが、プラスチックのボディを一から作るにはなかなか専門的な技術とコストもかかります。
つまり、本格的なルアーが低コストで作れるのが、バルサ材を使うメリットと言えますね。
注意点としては、バルサはとても脆いので、ボディを削ってアいになるヒートンを付けて終わり、というわけにはいかないことです。
そこらへんのポイントも解説するので、今回は基本に忠実に作っていきましょう。
ハンドメイドルアーの部品(材料)

ハンドメイドルアーの材料は、かなりシンプルです。
上の画像は、私の作るミノーの設計図をもとに、2枚下ろしにしたイメージ図ですが、シンプルに見えますよね。市販のルアーも基本的にはこんな感じです。
おおまかにわけて4つだけです。
その4つに何を使っているのか解説します。
ボディ…バルサ材(木材)
さきがけて紹介した通り、ルアーのボディには、バルサ材を使っています。
私はバルサ板(バルサシート)から切り出して張り合わせていますが、棒状のものを削って使う方もいますね。
構造線(アイ)…ステンレス硬線
赤で表した構造線、つまりラインやフックを取り付けるためのアイは、針金を曲げて作りますが、その針金の種類も重要です。
柔らかい針金では、切れこそしなくても、ぶつかったときや魚がかかったときに、つぶれたり伸びたりしてしまいます。
私が使っているのはステンレス硬線(硬質ステンレス線)で、細くても硬いので強度があり、人の力でも曲げやすく、かつ使用していてもなかなか曲がらない都合のいい素材です。
これもホームセンターで数百円から入手可能で、釣具店でも仕掛け作り用に置いてあることがあります。
オモリ(ウエイト)…ガン玉・ウエイトボール
青で示したものは、鉛玉、つまりはウエイトです。
バルサは非常に浮力が強いので、そのまま水に浮かべてもびっくりするほど沈みません。
なので、オモリを仕込んで適度に沈ませてあげる必要があります。
ミャク釣り仕掛けなんかにつかうガン玉オモリや割ビシでも十分機能しますし、重さの誤差が少ないハンドメイドルアー用のウエイトボールもあります。
ウエイトの素材には「鉛」と「タングステン」がありますが、ここらへんは追々長々説明します。。
リップ…サーキットボード・ポリカーボネート板・アクリル板
ヘッド下から飛びだした緑の部分がリップです。
リップはまさにミノーがバランスを崩すのを手助けする部品で、ここがミノーの泳ぎを左右するほど重要な部分です。
私は主に薄くて丈夫なサーキットボード(基盤リップ)を使いますが、丈夫なポリカーボネート板、透明度が高くて美しいアクリル板などを使うこともあります。
ホームセンターで手に入りやすいのはポリカかアクリルですが、強度と使い勝手を考えるとハンドメイド用品に強い釣具店でサーキットボードを用意してほしいところです。
ルアーづくりに使う道具
材料は紹介した通りたった3つで、全部そろえても1000円ちょっとかと思うんですが、少しネックなのが、作るための道具です。
結構いろいろと必要で、しかもルアーづくり以外に使わないようなものも多いので、改めて用意する必要もあるでしょう。
全部紹介すると長くなるので、詳細は別途解説することにして、今回はざっと一覧で紹介します。
ボディを作るための道具

- カッターナイフ
- 紙やすり(120~1000番)
- 両面テープ(粘着力が弱めで薄手のもの)
- ポンチ
- 彫刻刀(小丸刀・三角刀)
ボディづくりは、バルサ板をカッターで切り出して、イメージする形に削り、凹凸を紙やすりで削ればシルエットはOKです。
カッターは細かい作業向きの一般的なS刃(小型刃)と、バルサをざっくり切るときに使いやすいL刃(大型刃)があるといいかなと思います。(S刃だけでもOKです!)
両面テープは、組み合わせたバルサを借り合わせして削りやすくするために使います。
紙やすりは、凹凸を削だけなら120・240・300・600番でOKですが、コーティングした後は細かめの800・1000番もあるときれいに仕上がります。
ボディづくりはそれだけでなく、ウエイトとワイヤーを入れるスペースを作らなければいけません。
ウエイトボールを入れる穴を開けるためにポンチを使います。(たいてい4か5か6㎜)
ウエイトボールを入れる穴を整えるのに彫刻刀の小丸刀、ワイヤーを入れる溝を切るために三角刀を使います。(器用ならカッターでも行ける…?)
構造線を作るための道具

- ワイヤーカッターorヨーロッパ型ニッパー
- ワイヤーループプライヤー
- ペンチ
構造線は、ステンレス硬線をカットし、直角と丸に曲げる工程があります。
ワイヤーカッターはカットする工程で使いますが、硬い針金も切れるヨーロッパ型ペンチでもOKです。(細かい作業はヨーロッパ型ペンチが吉)
ワイヤーループプライヤーは、先端が丸くなっていて、挟んで曲げ込むことで丸く曲げることができるので、アイを作るときに使います。
なお、ドライバーのような硬い棒状のものに巻き付けて、ペンチで締めこむことでも代用できます。
ペンチは、主に90度に曲げるときに使います。(ガン玉を使うなら潰すときにも使います)
その他で使用する道具や材料

そのほかの工具&材料たちです。むしろこれが大事だったりします。
- ボールペン(太目がおすすめ)
- 精密測り(0.1g単位)
- 瞬間接着剤(ジェルがおすすめ)
- デザインナイフ
- クリップ
- ルアーを吊るすための箱(吊るすための棒も)
- プラスチックカッター
- 2液エポキシ接着剤
- ルアーアイ
- ホビーソー(使わないことも)
これらに関しては何に使うか説明は割愛しますが、結構大事なものも多いので、百円ショップも活用しながら揃えていただけるといいかと思います。
アルミテープについては、ウロコ模様やヘッドを作るのに使います。
ハンドメイドミノーといえばアルミ貼りというイメージがある方もいるかもしれませんが、これも必須ではありません。
塗装してあげるだけでも、十分魚にアピールできます。
塗装・コーティングについて
ちょっと厄介なのが、塗装とコーティングの工程に使うものです。
細かく書いちゃうとかなり長くなるので、今回は私が使っているものだけ紹介する形にします。
塗装に使っている道具
- エアブラシ(withコンプレッサー)
- Mr.カラー
- 筆
- 爪楊枝
私はMr.カラーをエアブラシで吹き付けて塗装しています。
じゃあ筆はというと、エアブラシでは難しい細かなところを塗ったりします。
爪楊枝は、ニジマスやブラウントラウトなんかにある点々を再現するために使っていますね。
もちろんエアブラシじゃないと絶対ダメというわけでなく、工夫すればスプレー塗料や筆塗りでもきれいに仕上がります。
水性サインペンでそれなりに仕上げる方法もあるので、気が向いたらその方法もご紹介しますね。
コーティングに使う道具
- ウレタンコート
- セルロースセメント
ハンドメイドルアーのコーティング剤には王道の2種類があり、私はどちらの長所も踏まえて使い分けています。
というのも、コーティングと一口に言っても、実は2つの意味があって、ボディと塗装を保護するためのコーティング、そして浸透させつつバルサを固めるためのコーティングがあります。
ウレタンコートは保護する意味ではいいのですが、柔らかめなので固める用途には向きません。
セルロースセメントは固めるのには向いていますが、割れることがあるので保護はウレタンに劣ります。
少し大げさに言えば、「硬化後のウレタンコートはビニール」「硬化後のセルロールセメントはプラスチック」のようなイメージです。
また、コーティングそのもの意外にも、ウレタンは量に対する価格が高く、開けた瞬間から劣化してしまう、セルロースセメントは塗装を流しやすく、臭いがきついなど、それぞれ一長一短です。
これについても詳細はいずれお話しますが、量産せず、お試しで自分の使う分だけ作るなら、ウレタンコートを使い捨てるつもりで使うのが手軽かなと思います。
ハンドメイドルアーづくりの手順
今回はサラッとですが、具体的なハンドメイドルアーの作り方手順を紹介します。
これも項目ごとに今後詳細を解説していくので、紹介した素材や道具をどこでどう使うのか、流れを把握する感じで頭に入れておくといいかと思います。
形とデザインのイメージを設計図(型紙)に起こす
まずは、どんな形にしたいか、どんな顔や模様にしたいか設計図を作り、型紙に起こします。
このときに、ウエイトを入れる位置と、アイの位置もおおよそ決めておきます。
正確に作るにはのちの作業で型紙が必須なので、必ず型紙を残しておきます。何枚かコピーしておくと良し。
バルサの切り出し
デザインしたシルエットをバルサシートにボールペンで書き写します。
そして、ボールペンの線をなるべく残さないようをカッターで切り出します。
バルサは同じ板でも部位で重さが違うことがあるので、精密測りで重さを測って、誤差の少ないものを組み合わせます。
ボディの削り出し
組み合わせたバルサを両面テープで仮止めし、シルエットをカッターで大まかに削り出します。
その後、120~320番まで紙やすりをかけて角をなくし、表面を慣らします。
構造線を作り、ボディに溝を切る
ボディができたら、構造線を作ります。
ワイヤーカッター、ワイヤーループプライヤー、ペンチを使い、トップアイ→フロントフックアイ→リアフックアイの順で、ボディに合わせながら作ります。
構造線ができたら、構造線を埋め込むための溝を彫刻刀の三角刀を使って作ります。
ウエイトホールを作る
構造線の溝を作ったら、そこに干渉しない位置にウエイトを入れる穴を、ポンチを使って開けます。
このときも型紙でウエイトの位置を左右対称にボールペンでマーキングします。
穴が小さすぎたら、彫刻刀の小丸刀を使って調整します。
ボディを張り合わせる
ウエイトと構造線両方入れてみて、大きな隙間やずれがなく合わせられることを確認したら、瞬間接着剤でボディを張り合わせます。
少ないとすぐ固まって張り合わせにくく、防水性も高めるために少々はみ出る程度に塗るのが吉。
ボディのサンディング
しっかり瞬間接着剤がくっ付いたら、今一度紙やすりをかけます。
段差が気になるようなら320番から、ぴったり合っていたら600番でささくれなどを落とします。
コーティング剤にディッピングして木固め
ボディのささくれがなくなったら、ウレタンコート、もしくはセルロースセメントにどぶ付けして浸透させます。
どぶ付けするときは、ルアーのアイにクリップを付けて、どぶ付けしたルアーは吊るしておきます。
このとき、専用薄め液があると濃度を落としてしっかり浸透させることができます。
第一スイムテスト
この段階でやっとボディを水に浸けることができるので、お風呂でスイムテストしてみましょう。
ヘッドやテールから垂直落下する、フローティング作ったのに沈む、シンキング作ったのに浮くなど問題があれば、1に戻ってやり直します。
なお、ボディの削り出しだけしてコーティングし、ウエイトを針金に取り付けてボディに刺してウエイトバランスやウエイトの量をチェックする方法もあります。(というか時間と材料を無駄にしないために、慣れるまではそれがおすすめです。)
コーティングを重ねる
スイムテストに合格したら、さらにコーティングを重ねます。一層だけでは強度が足りません。
使うコーティング剤のメーカーにもよりますが、私はウレタンは4回、セルロースは6~10回行います。
コーティングを重ねるときは、800番や1000番の紙やすりでサンディングすると、コーティングの食いが良く、凹凸も消えてきれいに上がります。
なお、ウロコ模様にアルミを貼る場合は、貼った後に段差がなくなるまでさらにコーティングを重ねます。
塗装&アイの貼り付け
コーティングが仕上がったら、塗装を施します。
色塗りが終わったら、最後に必ずクリアーでしっかりトップコートするのがポイントです。
アイを貼るときは、できれば同じ径のポンチで抜いてから貼るのがおすすめです。
ちなみにヘッドにアルミを貼るなら、この段階で貼ると際立って良い感じになります。
コーティングを重ねる
塗装したら、さらにコーティングを重ねます。
このとき、ラッカー系塗料だとウレタンにどぶ付けしたときにシワが入ったり、セルロースにどぶ付けしたときに塗料がどろどろに溶けることがあります。
エアブラシがある場合は、薄めたウレタン、薄めたセルロースを薄く何重にも拭いて、色止めという作業が必要になりますが、これも話すと長くなるので詳細は別途。
リップの取り付け
コーティングが完全に硬化したら、リップを切り出して取り付けます。
プラスチックカッターでおおまかに切り出し、やすりと紙やすりで整えます。
大きめに作っておくのが吉です。
デザインナイフ、もしくはホビーソーでリップを差し込む溝を作ったら、2液エポキシ接着剤で接着します。
第2テストスイム
リップを付けたら、泳ぎはほぼ固まっています。
お風呂で簡易的にテストスイムし、大きな問題がなければフィールドで試しましょう。
これも、最初の一個は塗装する前にしておいたほうが失敗したときの落胆が少なくなります。
ちなみに左右どちらかに泳いだり、斜めに泳ぐ場合はトップアイが曲がっているので、ペンチで角度を修正しましょう。
最終コーティング
しない方も多いかもしれませんが、私はリップの付け根から浸水するのを避けるために、最後に1層だけ薄めたコーティング剤でディッピングしています。
このときはヘッドを必ず上にして吊るします。(頭を下にするとリップの先端にコーディング剤が溜まって泳ぎが狂うので)
完成!どんどん釣ろう!
というわけで、これでバルサを使ったハンドメイドミノーの作り方は終わりです。
そしてこの記事もお開きとなります。
なるべく長くならないつもりでしたが、ちょっと長いですね。でもこれが基本的にはすべてです。
ただ作るだけなら難しい技術も必要なく、本当に誰でもできると思います。
そのほか、きれいに仕上げたり、より泳ぎをよくするためのポイントなどは、追って説明していきますので、興味のある方はぜひそちらも参考にしていただければ幸いです。